第8話 バトルの行方
2002年6月11日一見、穏やかな日々が訪れた。A先生のダニー先生をネチネチ虐める声がしないだけでも空気がとても軽く感じられた。
でも、私の心の中では事務所に対する嫌悪感と喪失感が芽生えていた。
A先生のもとから逃げる客はその殆どがA先生のチクリにより、税務署からの調査が入っていた。
そのせいで倒産した会社も少なくなかった。
「せいせいするわい」と悪代官の台詞が事務所にこだまする。
A先生は税務署時代から子飼いの部下がいるので彼らに情報をリークするのであった。
風の便りでダニー先生のことも耳に入ってきた。
あれからダニー先生はA先生に顧客を13社分けて貰って独立。自宅で税理士事務所を開業していた。
他の税理士仲間は口々に「いやぁ。A先生はお優しい方ですなぁ」と誉めそやしていた。私もその意外な行為を少し見直し始めていた。
「バカね。顧客の内容を見てご覧なさいよ」と長島さん。
私はオズオズと今回ダニー先生について行った顧客リストを見た。
次の瞬間、息が止まりそうになった。
顧問報酬月3万円以下。赤字決算会社でしかもここ半年か何年もの間、顧問報酬が未納。
何度も督促を出した先ばかりだったのだ。
払いの悪い会社をダニー先生のもとへお払い箱にしたわけである。
ダニー先生からの辞表が郵送で届くとほぼ同時に顧客からの電話がひっきりなしに掛かってきた。
内容は次のとおり。
突然、自分の顧問先がダニー先生と言う先生に代わったとの葉書をダニー氏から頂いたがこれはどういうことなのかと言う苦情とも言える問い合わせが殺到した。
つまり、顧客への説明は一切行わないまま、そして何の了承も得ないままA先生はダニー先生に顧客を渡したのであった。
当然、顧客は突然の出来事に慌てふためいている。
ダニー先生も顧客を訪問するなどの説明をしないまま、ただ、「これからは御社の顧問は私になったので、下記口座に顧問報酬を振り込んで下さい」と乱暴にボールペンで書きなぐった葉書を出したらしいのだ。
事務員の女性達もこれには一様に呆れた口調でこう言った。
「実は、私のところにも葉書が来たんだけど・・・。見てこの字。凄い怒りに任せて書いたって感じ。
しかも、内容は怨み辛みでビッシリ・・・」
ナルホド、ボールペンのダマも生々しく渾身の力を込めた葉書がそこにあった。
この葉書を今までお世話になった顧客全てに送ったらしく、「なぁに。あの内容。あの字」と甚だ不評だったらしい。
「気持ちは分かるけど・・・。男を下げちゃったわよねぇ」としみじみと定岡さん。
先生には、まだ小学校に上がるお嬢さんがいた筈だ。先生の顔にそっくりのダニージュニアが・・・。
暗澹たるダニー先生の船出が順風満帆であることを心底祈らずには要られなかった。・・・合掌。
でも、私の心の中では事務所に対する嫌悪感と喪失感が芽生えていた。
A先生のもとから逃げる客はその殆どがA先生のチクリにより、税務署からの調査が入っていた。
そのせいで倒産した会社も少なくなかった。
「せいせいするわい」と悪代官の台詞が事務所にこだまする。
A先生は税務署時代から子飼いの部下がいるので彼らに情報をリークするのであった。
風の便りでダニー先生のことも耳に入ってきた。
あれからダニー先生はA先生に顧客を13社分けて貰って独立。自宅で税理士事務所を開業していた。
他の税理士仲間は口々に「いやぁ。A先生はお優しい方ですなぁ」と誉めそやしていた。私もその意外な行為を少し見直し始めていた。
「バカね。顧客の内容を見てご覧なさいよ」と長島さん。
私はオズオズと今回ダニー先生について行った顧客リストを見た。
次の瞬間、息が止まりそうになった。
顧問報酬月3万円以下。赤字決算会社でしかもここ半年か何年もの間、顧問報酬が未納。
何度も督促を出した先ばかりだったのだ。
払いの悪い会社をダニー先生のもとへお払い箱にしたわけである。
ダニー先生からの辞表が郵送で届くとほぼ同時に顧客からの電話がひっきりなしに掛かってきた。
内容は次のとおり。
突然、自分の顧問先がダニー先生と言う先生に代わったとの葉書をダニー氏から頂いたがこれはどういうことなのかと言う苦情とも言える問い合わせが殺到した。
つまり、顧客への説明は一切行わないまま、そして何の了承も得ないままA先生はダニー先生に顧客を渡したのであった。
当然、顧客は突然の出来事に慌てふためいている。
ダニー先生も顧客を訪問するなどの説明をしないまま、ただ、「これからは御社の顧問は私になったので、下記口座に顧問報酬を振り込んで下さい」と乱暴にボールペンで書きなぐった葉書を出したらしいのだ。
事務員の女性達もこれには一様に呆れた口調でこう言った。
「実は、私のところにも葉書が来たんだけど・・・。見てこの字。凄い怒りに任せて書いたって感じ。
しかも、内容は怨み辛みでビッシリ・・・」
ナルホド、ボールペンのダマも生々しく渾身の力を込めた葉書がそこにあった。
この葉書を今までお世話になった顧客全てに送ったらしく、「なぁに。あの内容。あの字」と甚だ不評だったらしい。
「気持ちは分かるけど・・・。男を下げちゃったわよねぇ」としみじみと定岡さん。
先生には、まだ小学校に上がるお嬢さんがいた筈だ。先生の顔にそっくりのダニージュニアが・・・。
暗澹たるダニー先生の船出が順風満帆であることを心底祈らずには要られなかった。・・・合掌。
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